6歳のとき
香林坊の裏ッ方にある
レンガ造りの、古い映画館で魔女の宅急便をみた
せまい入り口に
キキがパン屋の留守番をしているシーンのポスターが貼ってあって、すでにお話の世界に連れ込まれていた

小さな映画館だったから
満席で、確かわたしはお父さんと階段に腰掛けて
みていた気がする
ざわざわしていて、でも映画からパンの焼けるにおいとか、ニシンのパイの温度が伝わってくるみたい。雨の冷たさとか。キキが悲しかったりやきもちをやいたりほっとしたり、夢中になってみていたから気がついたら階段で立ち上がったりしていた。

そこはお父さんとお母さんが
大学生だった頃の行きつけの映画館だったそうで
わたしは今でもそこの空気を
からだが覚えてる

今はもうなくなっちゃったけど
あの映画館が一番好きだな
夢じゃない
「禁煙室」という喫茶店
良くタバコをふかしていたであろうおとうさんと、そのとなりで芝居の台詞を唱えていたであろうお母さんの姿を想う

おかあさん少し、私は今げんきがありません
手紙を書くちゃ

今朝、電車から降りようとすると、ぐらりと揺れて
私の腕は一人の黒人さんのお腹に跳ねた
すいませんとつぶやくと
「ダイジョウブデス」
といわれましたので、
「スイマセンデス」
ともう一言
瞬間、キキには黒猫のジジがいて、ピノキオにはジミニークリケットがいて、私にもなんか心の精がいると思った

黒人さんは
私の心の精が
形になって現われたのかもしれない
そうなんだなと思うと、
ダイジョウブなのだ
何にも心配は要らない

ダイジョウブダ
今日は月曜日

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